Japan Security Study Group

日本及び海外の専門誌の論考・論文等をテキストにゼミ形式で月に2回、勉強会を実施中しています。


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Apr./Mar./Feb./Jan.

2015月4月1日

アメリカの「世界の警察官」退任発言について(2)

このため、イラクはF16戦闘機とアパッチ攻撃ヘリコプターの購入を決断した。マリキ政権はブッシュ政権末期の2008年9月よりF16の購入を検討し始めた。彼らが決断を下したのはオバマ政権の発足から数ヶ月後の2009年4月である。イラクは2011年にまず36機を発注することでアメリカとの間で最終的に合意に達したが、UPI通信の報道によればそれでもイラク全土をカバーするには不十分だという。問題はサダム・フセインが政権の座を追われてからイラクにはジェット戦闘機がなかったので、そのような先進機器を使いこなせるパイロットがほとんどいないということである。さらにISISの攻撃から教官とイラク軍パイロットの安全を期すため、F16の飛行訓練地はイラク北部のバラド空軍基地からアリゾナ州ツーソンに変更された。そのうえ、イラク軍パイロットには長時間の集中的な訓練が必要である。よってF16がイラクに引き渡されるのは2017年になるという。イラク議会はF16の引き渡しがさらに遅れる事態に苛立ちを募らせている。

Image:Program Executive Office Soldier via Flickr

2015月3月19日

プーチン大統領は核大国の責任を果たす気があるのか?

国連安全保障理事会の常任理事国の指導者ともなれば、大西洋憲章と国連憲章に記されているように国際公益を守るために責任ある行動をとるものとされている。しかしウクライナ危機以降にロシアが新たに打ち出した核戦略ドクトリンとヨーロッパでの挑発的な行動から、プーチン政権は大国としての責務と責任を果たすよりもその地位を濫用しているのではないかと疑わざるを得ない。プーチン氏が核による威圧を行なえば国際安全保障は不安定化するのみである。そうした問題をはらみながら、ロシアはイランでのP5+1協議と北朝鮮での六ヶ国協議の両方で当事者となっている。よってウラジーミル・プーチン大統領が世界の核の脅威を低下させる責任を果たすかどうかを批判的に問いかけねばならない。

Image:Global Panorama via Flickr

2015月3月11日

アメリカの「世界の警察官」退任発言について(1)

オバマ米大統領が「アメリカはもはや世界の警察官ではない」と発言したことについて、それを歓迎する声は今ほとんど聞かれない。イラク戦争を批判した者達さえも、オバマ発言のあまりの唐突さには当惑している。アメリカは本当に「世界の警察官」から降りる気なら、その責任の一部でも分担できるパートナーを指名すべきであった。歴史を振り返れば、アメリカはベトナム戦争後においても、国際的な関与を弱める意図を表明したが、当時アメリカを率いていたニクソン米大統領はオバマ大統領よりもはるかに責任ある行動をとっていた。すなわち、ニクソン・ドクトリンはベトナム戦争のベトナム化を表明したものであるが、ニクソン大統領は同盟諸国に広まるポスト・アメリカ世界への不安を宥めるため「アメリカは条約上の義務を遵守し、同盟国が死活的な安全保障上の権益を脅かされれば、支援する」とのメッセージを発した。両者の顕著な違いが見られるのは、中東政策においてである。

Image:The U.S. Army via Flickr

2015月1月11日

アメリカ海軍は敵のA2ADにどう対処するか?

アメリカの敵の間でのA2AD能力の急速な向上に鑑みて、米海軍には対抗手段によって国際航海と自らの海洋活動の自由を守る必要がある。現在、アメリカ海軍は中国やイランのような挑戦勢力から突きつけられる高度な対艦ミサイルの脅威に直面しているが、冷戦後の国防費削減がアメリカの艦隊防空能力の制約となっている。アメリカはその能力を再建し、いかなる挑戦者にも自らの海洋でも優位を脅かされてはならない。

2015月1月7日

サイバー攻撃の対応困難性 -複雑化する状況と高まる難易度-

11月30日、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントがサイバー攻撃を受け、ネットワークがダウンする事件が起こった。同社が作成した映画『The Interview』が金正恩暗殺計画を描いており、これに対して北朝鮮は「無慈悲な報復」を行うと警告していた。 攻撃後、北朝鮮は12月4日に「北朝鮮はハッキングなどの行為を禁ずる国際法の順守を公約としている」とのコメントを出した。これに対し米当局は12月18日に「洗練された(技術を持つ)行為主体が始めた、悪意を伴う破壊活動」「北朝鮮に責任があるかどうかは調査中だが、相応の対応を検討中」と発表。1月2日、最終的にオバマ大統領は北朝鮮に対する制裁を承認した。 一度は映画を公開しないこととなったが、結局は公開された。同社の米政府に対する信頼感が強ければ、このような混乱のある経過とはならなかっただろう。

Image:morktor via Flickr

2014月12月24日

ヨーロッパ文化政策研究 -イギリスを事例とする理念の検討-

本稿では、ヨーロッパ諸国の文化政策について検討する一環として、イギリスにおける文化政策の現状とそれを取り巻く議論について述べる。  イギリスにおける政府と文化事業の結びつきは、隣国フランスほど強固ではないが、依然として長い歴史を持ち、今日まで継続している。代表的な事例としては、シェイクスピアも活躍したエリザベス朝演劇における政府の保護・干渉(1)や、近年ではブレア政権下で強力に推し進められたクールブリタニア政策(2)などが挙げられる。

Image:Howard Lake via Flickr

2014月12月18日

韓国便り-戦略対話の現場から-

約1か月前に日米韓の若手戦略家・研究者が集まる対話に参加するため、韓国の首都ソウルを初めて訪れた。金浦空港から漢江沿いに市中心部に向かうタクシーの中で日本語ができる運転手に聞いたところでは、昨今は観光客をはじめ中国人のプレゼンスが増えているとのこと。宿泊ホテルは郊外に位置し、コンベンションセンターにカジノ、免税店が併設されていたが、空き時間にカジノ・免税店フロアを訪れたところ、やはり中国人と見られるツアー観光客が多かった。

Image:Tzuhsun Hsu via Flickr

2014月12月14日

緊張化する欧露関係-ロシアに空から包囲されるヨーロッパ-

去る10月29日付けで『ワシントン・ポスト』紙に「ウクライナ危機を契機にロシアとNATOの緊張が高まるにつれて、ロシア空軍はバルト海および黒海方面からだけでなく、ノルウェーおよびスコットランド沖の北大西洋上の空域からもヨーロッパを包囲している」という記事が掲載された。このことはロシアが東西両前線からヨーロッパのサプライ・ラインを切断できることを意味する。私がこの記事に注目した理由は、イギリス空軍の公式フェイスブックで日頃から「スコットランド上空に飛来するロシアの爆撃機に対してタイフーン戦闘機がスクランブルを行なっている」との情報を目にしていたからである。

Image:UK Ministry of Defence via Flickr

2014月12月3日

中国への幻想

筆者の好きな米国の評論家にジェームズ・マンがいます。彼のシャープな切り口と本のイラストがお気に入りです。本書は2008年の刊行で訳書もありますが、今でもその内容は色褪せていません。本書は日本にとって重要な国家である米国と中国。とりわけ米国が中国をどうみているかという視点を提供しています。原著は114ページ程で、内容はそれほど、深く学術的なものではありません。 マンのシナリオは、中国が経済発展し続けるが民主化せずに権威主義体制を維持するという想定を立てています。この想定の根拠は、およそこれまでの30年間(ニクソン政権から、前ジョージ・W・ブッシュ政権までの)対中政策を考察(事実関係確認)し、 現在のアメリカのエリート層の持つ中国へのイメージを厳しく批判しています。

Image:Joe Penniston via Flickr

2014月11月27日

輪読会(1) -ハワード『平和の創造』-

戦争は人類と同様に古くから始まっている。しかし平和もまた創造されてきた。 これまでの歴史の結果から、人間の生まれつきの攻撃性を探求できるかどうかに関しては困難であろう。また、その攻撃性が希少な資源をめぐる必然だったかということも困難である。ルソーは人間が臆病であり、社会的関連性を構築していくうちに戦闘を好むようになり、そしてそのような関連性自体は、生き残るために必要だったと述べる。 カントの言葉を借りれば、「自己中心的な社会性」は、協調と紛争を同時に生み出したことになる。

2014月11月16日

戦争/映画(1) -自由の番人?-

ハリウッド映画は、その時々の社会的な空気ともいうべきものを反映します。 それはアクション大作であっても変わりません。むしろ、案外と大作とされるものに大胆な設定や、論争的であったり作家的なテーマを盛り込んでくることもあり、 いまだに映画を更新する力を有しているのがハリウッドであると確信させるに値する作品が作られています。

Image:Robert Couse-Baker via Flickr

2014月10月1日

暁の安全保障小話(1) -勝者と敗者-

キッシンジャーの名著「回復された世界平和」は、ナポレオン戦争後の国際秩序がいかに形成されたかを描いています。 オーストリアの、そして事実上は全ヨーロッパの首相であったメッテルニヒは、侵略者ナポレオンが敗北に瀕するや、彼を守るために同盟軍のパリ侵攻を遅らせています。単に勝利しさえすればいいのなら、ナポレオンを滅ぼすことです。

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