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韓国便り-戦略対話の現場から-

掲載2014月12月18日
執筆D氏

 約1か月前に日米韓の若手戦略家・研究者が集まる対話に参加するため、韓国の首都ソウルを初めて訪れた。金浦空港から漢江沿いに市中心部に向かうタクシーの中で日本語ができる運転手に聞いたところでは、昨今は観光客をはじめ中国人のプレゼンスが増えているとのこと。宿泊ホテルは郊外に位置し、コンベンションセンターにカジノ、免税店が併設されていたが、空き時間にカジノ・免税店フロアを訪れたところ、やはり中国人と見られるツアー観光客が多かった。

 肝心の対話会議であるが、日韓関係が厳しい最中、歴史問題はもちろん、李明博政権時に破談に終わったGSOMIA(軍事情報包括保護協定)およびACSA(物品役務相互提供協定)についても何度か言及があった。

 米国の参加者からは、両国とも民主国家である以上世論が対外政策にある程度の影響を及ぼすが、「それを協力できないエクスキューズとしてはいけない」旨発言があった。日韓の関係修復を、日米韓の枠組みで東アジアの安全保障に取り組みたい米国が重視しているのは理解できる。

 しかし、今回の会議全般を通じて感じたのは、歴史問題もさることながら、韓国側は日本との協力にそれほどメリットを見出していない、日本から何らかの支援を受けることをそう期待していないだろうことだ。

 もう1つ強い印象として残ったのは、韓国側は「南北統一」という宿願、日米とは異なる政治的課題があり、安全保障上の課題解決よりもそちらを優先する傾向が見られることだ。我々の間には共有されたビジョン、政策のゴールが存在しないように見えた。

 日米韓の「共通の価値(民主主義、市場経済など)」に基づいた三国関係は政治的な意味合いはあるものの、今現在ワークしていないし、ワークしたところでどの程度日本の国益の観点から得られるものがあるのか疑わしい。会議では言及されなかったが、最近の朴政権の姿勢、対日関係に加えて報道の自由という民主主義の上で大事な要素を軽視する動向を見ていると、価値観を共有しているかさえ怪しいが。

 来る2015年は日韓基本条約締結50周年の節目であり、冷え込んだ日韓関係を立て直すのにまたとない機会とされる。裏を返せば、ここで関係改善に向けて双方が動かなければ、おそらく日韓関係は現在の悪循環傾向が続くという悲観的な見方でもある。

 中国の台頭、北朝鮮の核開発、日米同盟プラス1という考え方には大いに賛同する。しかしながら、日米同盟と米韓同盟を統合するという試みには多くの困難がつきまとう。

 また、指摘しておかなければならないのは、日本の安全保障法制の整備が進まなければ、どこと組もうとも日本は信頼できるパートナーとして足りないということだ。来年には集団的自衛権の限定的行使を可能にするための安保法案が国会に提出され議論されるだろう。その際には、都合のよいシナリオに合致しなければ機能しないものでなく、「想定外」にもある程度対応できるよう、法律論に偏らず安全保障を議論して欲しいと願う。

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